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2021-04-07

ゼロから誂える木のテント

山と木文化の研究会(ヤマケン)で高橋が担当して2016年から続いている「木のテント」の活動で、今年2021年は少し例年と違う動きがありました。
 従来のヤマケン木のテントの活動は、ヤマケンが所有している地元の杉材で造ったオリジナルのテントを、依頼があれば組立に行き、催し環境の修景に寄与し、地域の木材も知ってもらう、という物でした。(参考ヤマケン木のテント
 ところが、今年2021年は使用目的に合わせてデザインし、ゼロから誂えてそのまま依頼者の所有物となるオーダーメイドのテント製作が始まっています。ただ、発注者自身がゼロから製作を担当するというところがすこし変わっています。

ひまわり畑のための 木と竹のパーゴラ

三条通まちづくり社会実験2021のための木のテント

「ひまわり畑の木と竹のパーゴラ」は、夏から秋にかけて京都市の大原野で催された「笑顔咲け!ひまわり王国」のための休憩施設として、ボランティアの方たちとゼロから製作されました。ヤマケン高橋からは木のテントのデザインと材料手配、ボランティアの方たちへの製作指導という最低限の技術提供とする事でコストを極力抑える方法でのつくり方です。


ひまわり畑へのお客さんは雨の日は来ないので、木のテントは基本的に日影を作る休憩スペースとして計画しています。
開催期間中の様々な催しを想定して、蛇行する日除けスペースと半円形のひまわりをバックにした日向スペースを創る配置計画としています。
農業用寒冷紗を転用し、レースのカーテンのように風になびいて涼しげな日影をつくります。この寒冷紗は台風の時は各ユニットごとに畳んでおけます。

蛇行する平面計画。ひまわりをバックにした半円の日向の中心に主宰者クロスケさんの竹のインスタレーション。




架構ディティール。最小限の加工と簡易な組立方法で製作されている。

大原野の山を借景にたたずむ木と竹のパーゴラ。

今回は、ゼロから、しかも技術のないボランティアの方たちと短期間(4日程度)で造り上げるというミッションであったため、用途を満たす木のパーゴラに仕上げる事は当然ながら、究極に簡単に早く、しかも安価で造れる方法で進める必要がありました。

そこで採用したのが、概ね下絵のような方法です。

基本的には、加工しやすい45x45と35x35の杉角材を手ノコギリで切って、インパクトで留めるのみの作業としました。使い終われば上図②の「くの字フレーム」まで分解出来て、省スペースで格納できます。

木材を直接現場に搬入。天気の良い週末にボランティアの方々と製作開始です。上の写真はくの字フレーム組立の様子。

子供たちも混ざってお手伝い。母さんはなれないノコギリで丁寧に部材を創っていく。

手伝いに来てくれた京都建築専門学校の2年生N君がインパクトの使い方指導してくれました。皆さんに注目されて緊張の様子w

くの字フレーム2個で門型の架構を作ります。今回は間口3m軒高さ2mです。

門型二つを筋違と母屋でつないで1ユニットの架構が完成。あとはこれにどんどん繋いで行く。

竹の格子の取付。地元大原野の竹を活かす活動をされているNPO法人京都発・竹・流通環境ネットのご協力を頂きました。550本ほどの取付となりました。

たくさん集まって頂いたボランティアの皆さんと、超おいしい手作りカレーをほおばる。

休憩中、農業用水路の冷たい流水に足を浸し涼むの図。子供たちとも仲良くなってほんとに楽しいひと時でした。

7月末から8月初旬の数回のワークショップで漸く完成。暑い時期でしたが終始賑やかに子供たちの笑い声が響くひまわり畑でした。

ボランティアは、ご近所の方々から普段クロスケさんの農場を手伝っておられる方々など本当にたくさん。
主宰者クロスケさんの人望と熱意が、今回のプロジェクト実現の大きな力でした。

さらに秋には「三条通まちづくり社会実験2021のための木のテント」の製作がありました。11/6(土),7(日)の午後の数時間を京都市の中心地、烏丸通以東の三条通り数か所を歩行者専用にするという大実験が行われ、路上でのワークショップ会場として木のテントが採用されました。
歩行者専用となった三条通は瞬く間に人だらけ、まるで縁日の参道の様です。

今後、継続的な実験を想定され木のテントを専用に誂える事となりました。
今回もひまわり畑のための木と竹のパーゴラ同様、ヤマケンはデザインと材料手配、製作指導を担当し、製作は主宰者が担当する事でコストを抑える計画です。

設置当日は、歩行者専用道路になる前に、協力商店の駐車スペースで実行委員の方々とユニットを組立。

実験を手動する京都大学山口敬太先生の研究室の院生たちと太秦トキワ荘で1日だけのワークショップで完成。(太秦トキワ荘とは?)

仮組も無事完了。屋根格子もパネル化して平面剛性確保と組み立て時間を短縮を図っています。

※写真:住山洋
その他写真:髙橋勝建築設計事務所

 

ゼロから誂える木のテント

従来の、ヤマケンが所有している組立式木のテントの設営サービスではなく、オーダーメイドの販売型組立式テント。ただし、使用者の予算やスケジュールに寄り添った製作体制から検討する。本投稿の2例の場合は、デザインと材料手配+製作指導のみヤマケンの最小人数で担当し、製作の手間はオーダー側が担当した。その際、製作担当する人員は専門家ではなく技術を持ち合わせないボランティアや学生たちであるため、最小の難易度、作業量で必要な用途を満たす製作方法になる様に配慮して計画している。

従来の木のテント設営サービスは、ヤマケン所有のテントを運搬するところから始める必要があり、設営できる範囲が概ね京都市内に限られてきた。しかし、ゼロから誂える木のテントの場合、製作者、材料の所在地はどこでも対応可能である。
今後、いろいろな地域の地元材を活用した木のテントが現れる事を期待している。

概要
ひまわり畑のための木と竹のパーゴラ

設営地:京都市西京区大原野

構造規模:木+竹
製 27ユニット
製作時期:2021年7月末~8月初旬
設計・製作指導:髙橋勝
構造監修:能戸謙介(アトリエSUS4)
製作:クロスケさんを応援するボランティアの方とのワークショップ 
   +NPO法人京都発・竹・流域環境ネット

三条通まちづくり社会実験2021のための木のテント
設営地:〒604-8083 京都府京都市中京区 富小路西入る日昇別荘前
構造規模:木製 3ユニット
製作時期:2021年10月
設計・製作指導:髙橋勝
構造監修:能戸謙介(アトリエSUS4)
製作:ヤマケン+京都大学学生チームを含む京の三条まちづくり協議会

山と木文化の研究会(ヤマケン)についてはこちら

今までのヤマケン木のテントの活動についてはこちら


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