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写真:髙橋菜生 ※山田圭司郎
“日常” の実験基地
β本町橋は、大阪市との協定に基づく民間事業による水辺の公園施設であり、占用水面を活用しながら、地域の人々の生活を豊かにすることを目的に構想された。施設の運営を行うのは、長年にわたってこの地域のまちづくりを担ってきたチームであり、設計にあたっ
て重要な要望として共有されたのは、日常の延長にある施設でありたいということだった。ただし、それは決まったいつもの日常の繰り返しではなく、オープン後にも、地域の人々に向けた新たな試みが行われ続ける“日常” の実験基地でありたいということであった。施設名称であるβにも「未完成で常にアップデートする」という思いが込められている。
都市の中心部に木の架構で場所を造る
敷地は大阪市中心地の高い耐火性能が要求される地域にあり、周囲は鉄骨造・RC 造で大きなボリュームの建物が大半を占める中、β本町橋はあえて在来木造を採用し、地元の大工など職方達がより関われる工法とした。
また、都市の中の木造建築として、新たな風景を作りながら、周りの風景にも違和感なく調和することを目指した。木目の綺麗な吉野杉に、ほんの少しの白色の塗装を施し、木材だけでなく金属素材等の都市的な要素と組み合わせることで、その調和を実現した。本施設に隣接する水辺で行われるSUP を始めとする様々なアクティビティの拠点施設として、木の柔らかさと都市的なシャープさの組み合わせが生むファサードが、人々を引きつける役割を果たしている。
架構は木の構造特性から、4.35m 及び3m×3mを基本とした均一な格子を採用し、長く汎用的に使える空間とした。この架構は住宅等と同じ流通サイズ木材での通常在来木造工事が可能であり、コスト合理性に配慮し、施設運営にも寄与している。また、耐力壁には特殊な筋違を採用し、公園へと広がる視線を妨げない様計画とした。
概要
所在地:大阪市中央区本町橋4-8(東横堀緑道公園内)
構造規模:木造2 階建(耐火)
延床面積:282.08 ㎡
竣工:2021年
設計監理:MIST+高橋勝建築設計事務所
※井上真彦(MIST)との共同設計
構造設計:能戸謙介(アトリエSUS4)
設備設計:徳岡崇(T2 設備設計)
グラフィックデザイン:佐藤大介(sato design)
施工:嵩倉建設 林雍浩・木村晃子・渡辺翔太