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2021-08-23

太秦トキワ荘

「太秦トキワ荘」は太秦映画村近くにある、鉄骨倉庫を、木が取り持つみんなが集まる場所として、レンタルオフィスとコワーキングスペース、ものづくりスペースへとコンバージョンしたプロジェクトである。

2階共用部 コワーキングスペース、バーカウンター、本棚が見える

展示・ものづくりスペース

西側の壁を利用し、20人程度のレクチャー等が可能。

窓際のベンチ兼本棚も一つの居場所として想定している。

BARスペース。奥に共用キッチンスペースがある。

共用会議室。

レンタルオフィス。

写真:住山洋

太秦トキワ荘

「太秦トキワ荘」は太秦映画村近くにある、鉄骨2階建ての倉庫を、木が取り持つみんなが集まる場所として、レンタルオフィスとコワーキングスペース、ものづくりスペースへとコンバージョンしたプロジェクトである。
主催者からの要望は、地域の木を活かして人が繋がれるような拠点として、創る(デザイン)する人や、造る人が集まって新たなものを作り出したり情報交換したり、お互い高めあえる場所にしたいといものだった。そんな思いからトキワ荘とは地名の常盤と漫画家の聖地とをかけたネーミングとなっている。また、地域の木をまちで使う循環のために少しでも寄与したいとの主催者自身のテーマからの計画でもあったと思われる。
そのため、場所の設え方としてはコストはあまりかけず、地元の木を使って、木質の空間としたいとの要望は自然なことと思われた。
既存建物は築50年以上の鉄骨造であり、1階倉庫、2階倉庫+事務所として長年使われたスレートで包まれた建物であった。また2階は数年前にあった近隣の大規模な建築工事の現場事務所として使用したため業者ごとに細かく仕切られ、工事終了後もその
ままになっていた。
そこでわれわれは、現況プランのまま複数のレンタルオフィスという使い方ではなく、最小限の変更で、共用部を広く創り、その中にコワーキングスペースや小規模なレクチャーにも利用できるコーナー、共用キッチン・バーカウンター等交流のきっかけが生まれやすい仕掛けがある計画を提案した。
 具体的には、細かく仕切られた一部の間仕切り壁と天井、および使われていない荷物EVを撤去し広い共用部を創りだし、そこにコワーキングスペースを含む交流の仕掛けのために必要な物だけを地元の木材で大工さんが現場で造るという方法である。


創り出した広い共用部にはコワーキング小屋を拵えた。これは、コワーキングスペース利用者同士がお互い認識しつつ独立性が保てる、ちょうどよい距離感を創り出すためであったり通路や図書スペースを柔らかく区切ったりするためののパーテションを設定し、それらの上辺をつないで耐震性をもって自立させるために最終的に生まれたものである。地域産の建築材である杉一等材3.5寸や4寸の材を使うため、大工さんは現場手刻みで家を建てるように拵えた。さらに家と同じスケールのため、長手方向の耐震性は構造設計者の能戸健介氏(アトリエSUS4)監修でブレットシュタッペル耐力壁(パーテションB)とし、短手方向の揺れ対しては垂木の様なつっかえ棒を既存壁や鉄骨に当てている。
コワーキング小屋は結果として、鉄骨造の中に小さな木造を入れ込んだ様な姿となり、この施設の目的を象徴したような仕掛けともなっている。


その他、必要になる机や本棚、バーカウンター、簡易キッチンも現場大工工事として、費用を抑えながら、全体的に統一感のあるデザインとしている。
 また、一般的には木質空間とする方法として床・壁・天井を木で仕上げる事だが、今回は必要な物を木で作るだけとし、床・壁・天井は既存に塗装、または鉄骨倉庫建築当時のままを現した。
(今回の発見であるが、50年以上を積み重ねた物は鉄骨やスラブであっても非常に重厚であり、力のある表情を見せてくれる。洗いと少しの表面調整で、目的に沿った味のある仕上げと出来たと考えている。)
 トイレ等は現場事務所時代に大幅に拡張されており、基本的にはそのまま再利用し壁色、手洗い周辺と、照明計画、オフィス階との管理間仕切りの設えのみとしている。
R1からR5のレンタルオフィスにおいては、間仕切り壁、天井等既存を利用の上最低限の仕上げ更新のみとし、ものづくりを行うであろう利用者に設えを委ねた。
ファサードにおいても、大きな変更はせず昔からの風景を踏襲しつつ、目に近い部分においては親しみが持てる木質化、色彩調整を行っている。

今後1階には木工のためのものづくりスペースに工具や作業台などが整備されていく予定である。
デザインとものづくりが行える場所として、たくさんの利用者があり、新しい事やものが沢山生れる場所となってほしいと期待している。

概要
所在地:京都府 京都市右京区常盤仲之町1-1

構造規模:鉄骨造地上2階
床面積:1階約192㎡、2階約192㎡、合計約384㎡、

竣工:2021年3月
設計監理:髙橋勝建築設計事務所
構造アドバイス:能戸謙介(アトリエSUS4)
施工:竹内工務店

太秦トキワ荘のHPはこちら

能戸氏によるブレットシュタッペル耐力壁の説明はこちら

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